[西加奈子]白いしるし

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はじめて西加奈子さんの作品で手に取ったのが「白いしるし」でした。
他にもプッシュされている人気作品があるのは知っているけれど、なんとなく「読まず嫌い」になっていたところ、近所の書店のPOPに惹かれて購入。薄い短編だったのも気軽な気持ちにしてくれて背中を押してくれました。

どっぷり恋愛ものの作品は久しぶりで、懐かしい感情を呼び起こしてくれました。

初めての西作品を読んでみて。
文体が好きです。とても気に入りました。ちょっと山崎ナオコーラさんに似ているのかな、とも思ったのですが、彼女よりもっと言葉の、表現の、チョイスが私好みで、世界観に引き込まれました。彼女の作る言葉の海に気持ちよく漂える感じ。

私は好きな個所や言葉に蛍光ペンで線を引く癖があるのですが、この「白いしるし」にもたくさんの蛍光ペンの痕がつくことに。

 

アルバイトを続けていかなければ生活は出来なかったし、したくもない仕事を引き受けて絵を嫌いになるよりは、このままずっと、趣味と仕事の間で、ふわふわと絵と対峙していたかった。

誰かに澱を投げつけることも、そして、その後に後悔で身悶えすることもない、苦しさとは無縁の生活があるのかと思った。

ひとりの知り合いは、神経の彼方までいっていた。

自分の体の細胞が、その、甘い水で満たされていく、日々だった。

私は彼のことを手に入れたかったが、彼と「恋人」の愛情の襞に立ち入る勇気は、とうとう持てなかった。

 

ままならぬ自分の感情と、それ以上にままならぬ他人の心。恋愛ってそうだったなあ、と少し思い起こす。
主人公の夏目は「凪の海みたいな恋愛がしたい」とこぼすが、そんな恋愛、どこを探したって、きっとない。
過去に何度も失恋を繰り返し、その度に心も身体も相手に委ね、傷つき、相手に醜態を晒し、完全に「あかん人」になり下がる。
私もそんなことを繰り返したことがある。きっと誰でも。どんな人も経験があるはず。
臆病になり、警戒するようになっても、また繰り返す。夏目も。

「白いしるし」はそんな物語。